227.「第三夫人と髪飾り」 2019/11/25 (月)

 ベトナム映画を観るのは「青いパパイヤの香り」以来なので、本当に久し振りでした。
監督・脚本は、アッシュ・メイフェア(女性)。5年の歳月を経て完成した初長編映画です。
美術監修は、「青いパパイヤの香り」を監督したトラン・アン・ユン。


 19世紀の北ベトナムが舞台。主人公の第三夫人を演じるのは、
900人以上オーディションした中から発掘された新人。
外見的には幼くて無邪気な印象ですが、14歳で嫁ぎ、すぐに妊娠し、
幼くして大人の世界に足を踏み入れてしまった少女。独特な色香を感じさせます。 
 第一夫人を演じている女優は、「青いパパイヤの香り」のヒロインを演じていた女優です。
とても懐かしかったです。現在は「青いパパイヤの香り」のトラン・アン・ユン監督のパ-トナーとしても有名です。
仕草や話し方がエレガントで、上品な雰囲気の女優です。


 映画の終盤、女性たちが全員「アオザイ」を着て正装するシーンがありました。
昔、事務所旅行で、ベトナムへ旅行した時の記憶が甦って来ました。事務スタッフと私の3人で、
色違いの美しいアオザイを着て、夫に写真を撮影してもらったことが、懐かしく思い出されました。


 映画のラストシーンは、結末を明かさないまま、不穏な雰囲気に包まれて静かに終わります。
美しく豊かな大自然の中、毒があるという色鮮やかな美しい黄色い花の記憶が、いつまでも心に残りました。


 この作品は、一夫多妻制や男尊女卑の世界を描きながら、同時に人間とすべての生き物についての
「生と死」についても緻密に描かれていました。淡い水彩画のような美しい情景の中に、
突如として血生臭く色鮮やかで象徴的な「赤」が現れ、強烈な印象を残します。
ベトナム人の女性監督の作品とは思えないような、エロティックな描写もありドキリとさせられますが、
ワンカットワンカットが、まるで一枚の極上の絵画を鑑賞しているような流麗な美しさで、
感性に強く訴えかけてきます。全編を通じて、美しくて品格のある作品だと感じました。


 私は、映画のタイトルがとても気に懸かりました。原題も「第三夫人」と表記されていましたが、
夫を巡る夫人同士のドロドロした愛憎のもつれ合いを想像しかねません。
また、14歳の「幼妻」が強調され過ぎて、特異な話題が先行しがちです。
抒情を感じさせる、独創的なタイトルを考慮しても良かったのではないかと思いました。
独特な感性の美しい映像美は大きな魅力で、一見の価値ありです。