72.「子どもたちをよろしく」 2020/03/21 (土)

 映画「子どもたちをよろしく」は、元・文部科学事務次官の前川喜平さんが企画し、
元・文部官僚の寺脇研さんが企画・統括プロデューサーとして名前を連ねています。
映画上映終了後には、企画・統括プロデュサーの 寺脇研さんのトークイベントが
開催されるとあって、デンキカンも久し振りに賑わいが戻って来ました。
トークイベントの司会を担当される政木ゆかさんが「お席は離れてお座り下さい」
と何度も呼び掛けていました。


 映画は、2組の家族を中心に物語が描かれています。陰湿ないじめ・アルコール依存症・
ギャンブル依存症・ネグレスト・性的虐待・対人依存・家庭崩壊・自殺などの問題が
非常にリアルに描かれています。次第に追いつめられて、心の行き場を失って行く子どもたち。
映画の中では、敢えて学校との関わりを描いていませんので、子どもたちにアドバイスをしたり、
救いの手を差し伸べる人が全く登場しません。悲惨な結末に、子どもたちの悲痛な心の叫びが
胸に鋭く突き刺さり、胸が痛くてなりませんでした。


 それぞれに複雑な事情を抱える大人たちと、多感な時期の子どもたちが抱える、深くて暗い心の闇。
悩みや苦しみに寄り添ってくれる人がいたなら、心が安らげる居場所があったなら、
違う選択肢があったはずだと悔やまれます。映画のタイトル「子どもたちをよろしく」とは、
観客すべてに向けて託されたメッセージだと受け止めました。


 上映後、企画・統括プロデュサーの 寺脇研さんが登壇されました。
寺脇さんは官僚時代は「ゆとり教育」の旗ふり役として「ミスター文部省」と呼ばれ、
教育問題のスペシャリストとしてテレビにも頻繁に登場されています。


 寺脇さんは福岡出身、中・高はラサール、卒業式では総代を務めたエリート中のエリートです。
そんな寺脇さんですが、中学生の時、勉強だけの生活に疑問を抱き虚しくなり、
自殺をしようとしたことがあるそうです。一見すると、人が羨むような順風満帆な人生を歩んでいる
ように見えても、人間の内面とは複雑なものです。思ってもみなかった意外な話に大変驚きました。


 寺脇さんは自分に残された時間も少なくなってきたので、映画を通じて次世代へ向けて
メッセージを託されたとのことです。残念ながら、若い観客の姿がなかったのは寂しい限りでした。
2週間の上映期間中、若い世代の観客にこそ鑑賞して欲しいと思いました。



 帰り道、自宅近くの坪井川が流れる土手に、色鮮やかな菜の花が満開なのが見えました。
視線の先には、修復工事中の熊本城が小さく見えます。
映画の内容が深刻な問題をリアルに描いていたので、
重く沈みがちな心をリセットするために菜の花を眺めました。
心が澄み渡り、清らかになるのを感じました。