67.ビル景 2019/05/03 (金)

 熊本市現在美術館で開催中の「大竹伸朗 ビル景」に関連して、アーティスト・トークがありました。
私は、昨日、大竹伸朗さんに関する知識が全くない状態で「ビル景」を鑑賞しました。
ビルがモチーフの現代アートということで、実は全く期待しないで鑑賞したのですが、
衝撃的な作品群に圧倒されて、心が強く動かされました。
作者の大竹伸朗さんとは一体どんな人物なのだろうと興味が湧きました。
作品から受けるイメージとしては、きっとかなりとんがった鋭い感じの人なのだろうと自分なりに想像しました。


 偶然ですが、今日は大竹伸朗さんのトークが聴けるということで、大変楽しみにしていました。
大竹さんは黒のキャップを被り、全身黒い服や靴で統一されていました。
やはり眼光が鋭く、顔立ちは彫りが深く、声は低音で、俳優の原田芳雄さんに雰囲気が似ているような気がしました。
大竹さんは、あらかじめテーマやコンセプトを決めて制作するのではなく「分からないことを分からないままに描いている。」と率直に話されていました。
ビルを描いているのかさえも分からないまま、自分の心の内面や感じたもの、情緒みたいなものを表現されているそうです。


 小学校3年生で不登校を経験し、大学進学に疑問を感じ北海道の農場で働き、その後イギリスを放浪しました。
美大へ進学しましたが、ありきたりな指導に対する反骨精神が旺盛で、先生の指導に素直に従うことはなかったそうです。
やはり、かなり個性的な生き方をされてきてるようです。
大竹さんは、昔から今でも警察官からよく職質をされるそうです。
どうやら覚せい剤の売人と思われるようで、警察官にそんな風に今も思われるということは、
自分が人を威嚇しているからだろうと言い、いつまでもそういう自分であることが嬉しいと言って笑わせていました。


 質問コーナーではある青年が発言し、知人の女性が大竹さんの絵を観て、何故だか急に涙が流れて止まらなくなったそうです。
そして、自分も何かをずっと一生懸命やり続け行こうと思ったと言っていたという話をされました。
おそらく大竹さんの絵を観た人は、みんな同じようなことを感じるのではないかと思います。
大竹さんは、人の心を打つ絵を40年間も描き続けているなんて本当にすごいことだと思います。
でも、大竹さんは絵を観た人を感動させようなんて思って描いているのではなくて、
絵を描きたいという強い衝動に駆られるから、ただ分からないけれど心のままに心象風景を描いているだけのことなのでしょう。
その純粋な心が絵を観る人にストレートに伝わるからこそ、絵を観た人は心を強く打たれるのでしょう。


 トークは1時間30分の予定でしたが、予定をオーバーして2時間ほどじっくり話しを聴くことが出来ました。
トーク終了後のサイン会では、参加者の大部分の人が大竹さんの著書を手にして大行列が出来ました。
あらためて大竹さんの人気の高さを思い知らされました。
美術館のショップでは、大竹さん関連のグッズや多数の著書が揃えてありました。
大竹さんは現代アートの世界ではひとつのジャンルを確立された、著名で魅力的な人気美術家であることがよく分かりました。