5.映画への旅 「生きているだけで、愛。」 2019/01/06 (日)

 今年のお正月映画は、日本映画を3本観ました。
「こんな夜更けにバナナかよ」、「生きているだけで、愛。」、「鈴木家の嘘」です。
 「こんな夜更けにバナナかよ」は、闘病ものにありがちな深刻さや暗さがなく、
生活の質を重視しながら病と共に生きることをテーマにしていています。
ユーモアタッチで明るく描いている点が好感が持てました。  
 「鈴木家の嘘」は予告編では、あえてコメディと勘違いさせるような編集をしていましたが、
実際は自死がテーマなのでかなり深刻な内容でした。
脚本や配役もそつなく良く出来ている作品でした。


 3本観た中で最も心に強く残ったのは「生きているだけで、愛。」です。
主演の趣里さんの強烈な演技に、最初から最後まで釘付けになりました。
登場人物の誰もが何かしら心が病んでいて、ヒリヒリするような感情が溢れ出し、心の痛みを伴って伝わって来ます。
誰かと繋がっていたいくて心をうまく通わせたいのに、うまく出来ない。
自分で自分の気持ちをコントロール出来なくて、もどかしくて苦しくて辛い。
そんな制御不能な自分の心と、生きている限り向き合い続けなければいけない生きづらさを抱えた人生。
主人公が抱える苦しみを想像すると、生きているだけで物凄いことなのだと思えます。


 主人公と同棲する恋人は、瞳には輝きが全く感じられず生気のない顔をしています。
いつも主人公の話を聞き流し、恋人と決して向き合おうとはしない姿がとてもリアル感がありました。
息はしているけれど、本当には生きていない感がよく表現されていました。


 映画のラストで、ほんの一瞬だけ二人が心を通わせるシーンが印象的でした。
肌を刺すような寒さに凍える真冬の深夜。
全裸でビルの屋上に佇む主人公。
今この瞬間を、確かに生きている。
人が人を本当に理解するのは、ほんの一瞬だけなのかもしれないと
思わせる強い説得力が感じられる印象深いラストシーンでした。


 主演の趣里さんは役を演じているというよりも、
確かに役を生きていると感じさせるリアル感がありました。
感受性の鋭さとずば抜けた確かな演技力に魅了されました。
お正月映画らしからぬ、衝撃的な秀作です。