85.「椿の庭」 2021/05/06 (木)

 映画「椿の庭」は、写真家の上田義彦さんの初監督作品。上田義彦さんは、監督・脚本・撮影・編集をされています。
明治時代の農家の家を移築したという、歴史を感じさせる風格のある佇まいの古民家。丹精込め手入れの行き届いた美しい庭。
四季折々に咲き誇る草花の美しさ。季節の移ろいと人生の移ろいを重ね合わせて描く、静謐な映像美に酔いしれる美しい作品です。
写真家ならではの自然光への拘り、光と影の捉え方の見事さ、移ろい行く自然の一瞬の美、調度品など細部にまで拘り抜いた美、
色彩感覚の鋭敏さ、カメラアングルの美に対する強いこだわり・・・。私は映画を観ながら「あぁ、なんて美しいのだろう」
と心の中で幾度も呟いていました。


 主演は富司純子さん。実に14年振りとなる主演映画ですが、「ベストワンの作品ではないか」と語られています。
凛とした佇まい、美しい所作、日本語の美しさがしみじみ感じられる柔らかな言葉遣い・・・日本女性の美を
見事に体現していました。富司純子さんが着用されたお着物は、監督のご希望により全て私物だそうです。
季節の移ろいに合わせた上品な着物姿は、とても素敵でした。静謐な映画に相応しく、BGMはピアノやチェロの
心が落ち着くゆったりとした音色で、映像美と美しく溶け合っていました。


 上田義彦監督のあらゆるものに対する、研ぎ澄まされ洗練された美学を堪能しました。終始、清々しいそよ風が心の中で
そよいでいるような心地の良い感覚を味わいました。あらゆる美で心が満ち溢れ、心が潤うのを感じさせてくれる作品です。