34.「津軽のカマリ」 2020/02/10 (月)

 「津軽のカマリ」は、盲目の津軽三味線の名人、初代・高橋竹山の姿を追ったドキュメンタリー映画です。
映画のタイトルにある「カマリ」とは、匂い・香り・醸し出す・・・というような意味です。
初代・高橋竹山の貴重な演奏シーンを観ることが出来るのが、この映画の最大の魅力となっています。
初代・高橋竹山が話す時には字幕が出ましたが、私は秋田育ちなので勿論字幕なしで理解出来ました。
青森の言葉は、秋田の言葉によく似ているので、とても懐かしかったです。


 初代・高橋竹山は、一度観たら忘れない東北人特有の独特な顔立ちと、説得力のある話し方が特徴です。
盲目であるがために三味線を弾き「物乞い」をして、どん底の生活を生き抜いて来た人の強さや逞しさが感じられました。
私は、演奏シーンを全て目を瞑って聴き入りました。初代・高橋竹山が奏でる音色の豊かさや激しさに、
胸をかきむしられるような感覚がしました。演奏しながら、心の眼にはあらゆる風景(厳しい風土の景色・侮蔑・飢餓・風の音・・・)が、
鮮やかに映し出され、激しく感情が揺り動かされていたことでしょう。


 映画には、もう一人の主役である、二代目・高橋竹山も登場していました。
初代・高橋竹山の地元である青森では襲名を認めてもらえず、現在も反発が大きいようです。
東京育ちの二代目はとても饒舌で、服装はまるでロックミュージシャンのようです。
独自の演奏法を極め、テクニックがずば抜けて優れていることが、素人目にもよく分かりました。


 「津軽の匂いがわきでるような音をだしたい」と語っていた初代と、ジャズのような即興性のある
セッションを積極的に行っている二代目の演奏は、対極にあるような印象を受けました。
それぞれの個性の違いから生じる、異質なものが浮き彫りになっていたように感じられました。


 初代は、他の弟子たちと全く違った個性の二代目に、大きな可能性を見出し未来を託したのでしょう。
二代目は、「高橋竹山」という名前を後世に残し伝えるために、バッシングされることを覚悟のうえで襲名したような気がします。
大きな勇気のいる決断だったのではないかと思いました。襲名後、青森で一度も公演を開催していなかったことは、
さぞや辛かっただろうと思います。映画のクライマックスでの、二代目の青森での初めての公演シーンは感動的でした。
初代とか二代目とかそんなことに拘ることよりも、気迫のこもった演奏にただ圧倒され聴き入りました。





 一夜限定の上映後、大西功一監督のトークショーが開催されました。
大西監督は函館在住ですが、昨年から日本各地で上映会を開催しています。
明日は西原村で、その後日田市、宮古島、日本海沿岸地域、最後は青森で上映会を開催するそうです。
突然、予期せぬゲストとして、熊本在住の女性シンガーが登場しました。
監督とトークをしたり、オリジナルアレンジの「五木の子守歌」を歌い、かなりの時間を割いていました。
監督と観客との貴重な質疑応答の時間が殆んどなくなってしまったので、大変残念に思いました。