54.「痛くない死に方」 2021/03/20 (土)

 映画「痛くない死に方」は、終末期医療における「在宅医療」について描いています。映画の前半部分では、在宅医としての
経験の浅い未熟な医師と、円滑な意思の疎通が出来ない介護する家族の歯痒さやもどかしさ、痛みのコントロールが
うまく出来ていない患者の苦痛の壮絶さ、疲労困憊する介護する家族の深い苦悩などがリアルに描かれています。
患者役の俳優の迫真の熱演は非常に説得力があり、観ていて辛くてなりませんでした。


 映画の後半はベテラン在宅医の「病気(カルテ)ではなく、人間を見ろ」という言葉に表現されているように、
患者の人生をまるごと看ることで、患者の尊厳を尊重して、最期の看取りの時まで患者の心にしっかりと寄り添い続けます。
自然な「枯れた死」や「痛くない死」を患者が迎えられるようにサポートする、在宅医と患者の理想的な姿が描かれています。


 主演は柄本佑さん。経験が浅く未熟なため思い悩みながらも少しづつ成長してゆく若き在宅医役は、柄本佑さんには適役でした。
柄本佑さんを、演技派のベテラン俳優陣がしっかり支えています。最近、映画の主演作に何本か出演している柄本佑さん。
しかし、柄本さんは演技の引き出しが多い分、定型的な面白みのない演技に終始することが多く、表情にも乏しいので物足りなさを
いつも感じていました。主演をするよりも、バイプレーヤーとして個性を生かすべき俳優だとずっと思っていました。
今回の作品では、幸いなことに適材適所の素晴らしい名バイプレーヤー達に力強く支えられて、柄本さんの自然体の演技が
キラリと光るような入念な演出がなされていました。久々に映画製作に臨んだ高橋伴明監督の手腕が冴えていました。