31.「すばらしき世界」 2021/02/15 (月)

 「ゆれる」や「ディア・ドクター」などオリジナル脚本にこだわってきた西川美和監督が、佐木隆三さんのノンフィクション小説
の原作本「身分帳」を映画化しました。今作品の映画化にあたって3年間に亘り綿密に調査をして、映画完成までに4年間を要しました。
主人公は実在した人物がモデルとなっています。刑期を終えて13年ぶりに刑務所を出所した主人公の生き辛さや、主人公を支える
周囲の人々との心の交流が描かれます。


 西川美和監督が17歳の頃から、素晴らしい役者だと憧れていた役所広司さんが主演。先日、NHKの番組に出演された西川美和監督が、
役所広司さんに「あてがき」をして脚本を書いたと語っていました。役所広司さんは西川監督の期待に応えて、主人公の人物像を見事に
表現していました。幼少期の不幸な生い立ち、ヤクザの世界にしか居場所を見いだせなかった不遇な境遇、一本気な正義感に突き動か
されると感情のコントロールがきかなくなり、制御不能の状態になってしまう主人公。主人公の内面を掘り下げて、複雑で深みのある
人物像を作り上げていました。主人公を多面的に的確に捉えて、魅力的な人物像を構築していました。


 その他にも、仲野太賀さん、橋爪功さん、梶芽衣子さん、六角精児さん、北村有起哉さん、白竜さん、キムラ緑子さん・・・など、
実力派の俳優陣が集結しています。若手実力派俳優の仲野太賀さんは原作者・佐木隆三さんと思われる役です。役所広司さんと
真正面から向き合う重要な役に抜擢されていますが、西川美和監督の期待に十分応えて熱演していたのが印象的でした。


 最近観た、秀作「ヤクザと家族」と比較しがちですが、「すばらしき世界」は随所にユーモアが散りばめてあり、全体的に明るい
タッチで描かれています。ただ、残念なのはラストシーンが悔やまれてなりませんでした。観終わった後、希望の抱けるラストシーン
であって欲しかったと素直に思いました。