248.「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」 2019/12/20 (金)

 今回の作品は、3年前に公開された「この世界の片隅に」に、新たに250カット(約30分)の
新しいエピソードを追加した「新作」です。前作を鑑賞しているので、新鮮味に欠けるのではないかと
危惧していましたが、前作よりもさらに深い感動を覚え、気がつくと涙が流れていました。
映画のオープニングで、のんさんの声が聴こえた途端「あっ、すずさんだ!懐かしい」と感激し、
コトリンゴさんの「悲しくてやりきれない」が流れると、「この世界の片隅に」の世界へ一気に引き込まれました。


 今回の作品では、すずさんや周囲の人たちの心の奥深い部分を丁寧に描いているので、より深く共感出来ます。
それぞれ居場は違っているけれど、精一杯生きている姿が健気です。また、映画の中ではいくつかの出会いと、
別れ(死)についても描かれています。特に、別れ(死)は予期せぬ一瞬の出来事である場合が多く、
残された人は突然の別れ(死)を受け容れることが出来ずに、ただ呆然とするのみ・・・。
死の捉え方や感情が、非常にリアルに描かれているので、かなり辛く感じるシーンもありましたが、心に深く沁みました。


 今回の作品は「続編」でも「完全版」でもない「新作」という表現をしていますが、まさしくその通りです。
前作と大きな話の流れは同じであっても、アプローチの仕方が違うので、すずさんの心情がより深く理解出来ました。
それにしても、やはりすずさんをのんさんが演じたことが、成功した要因のひとつだとあらためて再確認しました。
のんさんによって、命を吹き込まれたすずさん。すずさんを観ていると、のんさんの姿と重なって観えて来るから不思議です。
健気で一途、気持ちが優しくて、マイペースでのんびり屋、障がいがあっても挫けない芯の強さも持っているすずさん。
のんさんも、俳優として不遇な時代を過ごして来ています。すずさんも、のんさんも、愛しくて心から応援したくなります。


 今年を締め括るのに相応しい「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」。
良質な映画を観た充実感で満たされた豊かな時間(2時間40分)でした。